2016年2月21日日曜日

生活困窮者自立支援法から1年フォーラム

 NPO法人北海道社会的事業所支援機構と連合北海道共催による「生活困窮者自立支援法を考える市民の集い」に行ってきました。
自立支援法の施行からそろそろ一年、去年のこの時期モデル事業を行っていた釧路の櫛部武俊さんにインタビューした経緯もあり、地元札幌市の取り組みはどうなっているのか気になっていたため参加した次第です。実際は行政は北海道、札幌市の担当者のみならず、石狩市当別、新篠津への取り組み(ワーカーズコープ)、空知圏の取り組み(コミュニティワーク研究実践センター)もあり、内容は多岐にわたるので、最後の質疑応答のレポートだけ今後ホームページにあげたいと考えています。...
 端的に感想を言えば、隔靴掻痒の感あり。
 生活困窮者の幅がきわめて広いのです。
 それこそ明日の生活へのお金がない、という経済緊急事態の人から、「人とのつながり」の再構築の応援に関することまで。また、都市部と地方の文化の違いも明確に出てきました。
例えば「ひきこもり」について考えてみましょう。空知の報告では、旧産炭地居住で危険労働についていた親御さんのもと、それなりに高額年金を受給しながら、四十代、五十代の子どもがひきこもっている例があるという。また、農家の子どもでも似た例があるという。
 その場合、経済上の緊急問題とはいえない。では何が問題か。それは親亡き後の社会的孤立を課題になる、と支援者としては当然考えることでしょう。それは経済困窮問題とは違ってくる。また、地方では地元住民の目線の厳しさの問題もあるという。それは地域文化のありようの問題であり、社会的排除の問題につながる。
 生活困窮者自立支援は、経済困窮、ホームレス支援、学習支援、就労支援(中間労働含む)、そして社会的孤立からの防衛(社会的排除の問題)まで実に実に幅が広い。そしてぼくが考えていたのはそのすべてが支援者サイドが問題とし、支援者サイドが抱えるべきことなのだろうか、という思いでした。それが隔靴掻痒の思いでもある、と。

 例えば地域包括センターや民生委員、社会福祉協議会などが介護支援で80代の親の元に50代のひきこもる子どもが発見されたとする。存在が未確認という意味では問題であるかもしれないが、それ、そのこと自体が問題なのだろうか。例えば無職孤立、かつ職場のない地域で親に依存して生活してるとして、その人は生活弱者ではあるだろうが、そのことを持って五十代の子どもは困窮者で、困難事例であるだろうか。むしろ地域の目と、職場のなさ、都会に出るにしても履歴の空白などであれば、むしろ当事者主体のニーズとは何か、と考えたほうがよくはないだろうか。それには当事者が声を上げにくい環境を作り直すほうがいい。しかしそれが難しいから、全体を総合して困難事例になるのだろう。
それには個人もさることながら、就労をめぐる社会環境の問題であり、もっといえば就労が困窮者支援のゴールなのか、となる。親の年金が高額であれば、当面経済困窮ではないので、むしろ同じようなスティグマを感じる仲間づくりの中で人間関係の再構築ができるような仕組みづくりの事柄であるし、当事者にもっと内在的なパワーがあれば、この社会での新しい生活の方法を考える尖兵にもなりえる。いっそ、ひきこもっている人のニーズに即したサービス、地域課題の発見につなげる、逆転の発想もあっていいのではないだろうか。

もともとこの法案の源流は民主党時代の遡ればパーソナル・サポーターなのではないか、と僕は睨んでいる。そこに大震災がやってきて、困窮者支援が法制へと向けられた。だから釧路の櫛部さん曰く、最初は社会的包摂の議論だったのが、途中で行政からわかりにくいという話になったこと、かつ自民党政権に変わったことで、経済困窮支援に一層シフトしたことで、やや現実思考に傾斜しすぎたのだと思う。でも、理念として包摂や孤立支援は残っているので、上記のごとくかなり生活問題の幅が広がってしまったし、行政は新しい政策がまたひとつ加えられてしまった、ということになってしまったのだと思う。

 僕はひとが生きる以上、生活に困難を生じる局面は誰にも起こると思っているし、あえて困窮者という言葉を法律につけたのにも違和感がある。法律は「生活者支援法」という総合基本法にして、その元に障害者総合支援法や介護保険法などを位置づけ、ライフスタイルには生活危機が生まれることを前提として、社会的セーフティネットと、社会包摂活動支援(居場所支援、自助グループ支援など)をパッケージにすべきだと夢想する。

 いまの流れだと困窮者支援は整理がとても難しい。一年たったいま、この法制度の整理と分析が何らか研究として書籍化されないものかと思う。
ひきこもりも、枠組みの中に膾炙される以上、この法制度には高い関心を持たざるを得ない。誰かこの制度をリアルで研究してる人はいないでしょうか。そのような先生がいればぜひインタビューしたいです。