2018年12月22日土曜日

黒沢美津子女史の見たクラッシュ、ジョーストラマー。


英国パンクの二大雄のフロントマンだったジョーストラマーが亡くなってもう16年にもなるのかと。英国パンクが政治性が高いと言われたのはセックス・ピストルズが「アナーキー・イン・ザ・UK」や「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」でおきて破りな歌詞で登場したり、クラッシュが「白い暴動」などを歌ったためと思われるが、実際にはピストルズには「I」と「you」の歌詞曲が意外と多く、むしろ政治性にこだわっていたのはクラッシュのほうだと思われる。彼らの影響からメインストリートには出てこなかったが、ハードコアパンクなども生まれる(アナルコ・パンクを標榜したザ・クラスなど)「ロンドン・コーリング」からその反体制政治傾向が現れ、次作の、アルバムサイズ三枚組の「サンデニスタ!」でその政治性は第三世界の政治状況にも触れ始め、1977年に出たファーストアルバムで与えたイギリスワーキングクラス若者のダイレクトな共感性からは徐々に離れていきつつあったのは否定し難く、ワールドワイドな問題意識と本国での恵まれない若者と乖離が生じはじめただろうことも確か。サウンド面でもパンクから、ミクスチャーロックの草分けと言えるぐらいまで広がりを見せた。今はぼくは歌詞も含めて「サンデニスタ!」が一番名作だと思っている。幾分不必要な音響遊びが最終局面にあるとしても。

それにしてもクラッシュは同時代にUKパンクを聴き始めた人間には好きになってしまうと深くこだわりを抱いてしまう、思い入れが過剰になれるバンドだった。
(2004年に彼らのファーストアルバムについてブログに書いていました。痛いレビューです。こちらで、良かったら……。)

ぼくが初めてロックのライヴ、そして洋楽のロックのライヴを見たのはクラッシュの初めてにして最後の東京中野サンプラザでの2月の最終日ライブで、その日はFMとテレビ映像も入っていた。青函連絡船行き帰りの自分は完全なお上りさんで、もう82年頃だったのでパンクもニューウェーブへと呼ばれる流行変化がある頃だけど、もう来場するお客さんの結構がパンクスタイル、もうクラッシュ命、という趣きで熱気たるやムンムン。これはすごい!と田舎者は嬉しい驚き。ライブでもついに会えた!うおー、どの曲もみんな合唱だー、という。あれほど会場全体が熱気で燃えたライブは自分はその後知らない。強いて言えば、初来日を果たしたザ・フーのときがちょっと近かったろうか。でもそれもクラッシュに比較するとどうだろうか。


で、実はその後FMでその日のライブを聞いたら、「あれ?」と思うショボさもあって。ジョーストラマーの声が出てない。ギターのミックジョーンズは絶好調だったが、結局リードボーカルのジョーの声の調子が日本ではイマイチだったわけで。実際当時のツアー・スケジュールはかなりハードだった。初日のジョーはステージ脇にバケツを置いて、もどしながら演奏してたとか……。当時の映像もNHKで放映されたが、けっこう政治色も強調され、曲によっては訳詞も入る、という。番組の作り手も熱かった人たちなのだろう。いまからは想像もつかない。

さて、そんなファンも熱くさせるバンド、クラッシュだが、実はクラッシュの場合特殊な面というか、すごいのは業界関係者にクラッシュやフロントマンのジョーストラマーに惚れ込んでしまった話が多いことだ。身近に彼らを見た、ジョーストラマーと接した人たちが圧倒された話がとっても多い。音楽評論家、バンドの所属レコード会社、クラッシュに影響を受けたバンドたち。エトセトラ、ジョーストラマーに惚れ込んだという人は多い。日本ではカメラマンのハービー山口さんがプロになるきっかけとなった偶然ジョーストラマーに地下鉄乗り口で出会ったエピソードが有名だし、音楽誌、「ミュージックライフ〜ジャム」の編集長、水上はるこさん。日本の所属レコード会社、エピックソニーのクラッシュ担当だった野中さん、そして音楽雑誌、「音楽専科」でUK情報を発信していた黒沢美津子さん。

僕も当時は黒沢さんの英国レポートを読んでいて、硬派クラッシュだけじゃなく、もっと幅広いバンドのレポートやインタビューもあったけど、なぜ黒沢さんが英国に長期滞在して、パンク~ニュー・ウェイヴ時代を過ごしたか。実はクラッシュの影響だというのが、ロックジェットという雑誌の2004年の黒沢さんへのインタビューで判明。

ジョー・ストラマーの命日を忘れていて、昨日たまたまこの雑誌を読んだら、黒沢さんのインタビューを読み返してもう、その熱さ、真剣な受信の熱に燃えました!
クラッシュがいつまでも飽かずに好きだ、とついいつでも思ってしまうのはロックを紹介する側、クラッシュとかかわった人たちの語りが熱い、というのも圧倒的にある。彼らの語りがクラッシュというバンド、ジョー・ストラマーという存在への憧憬をいつまでも保たせる。熱が感染する。改めてそう思うのです。以下に黒沢さんのクラッシュにかかわる長文ロングインタビューを貼りますのでぜひ読んでみてください。クラッシュに出会う前段に、ゲイの誇りを高々と歌うトム・ロビンソン・バンドと言うバンドのトム・ロビンソンへのインタビューの内容に触れているところから始まります。
相互に若さ、という共通点があったにせよ、人が人にこれだけの感染させ、行動に移させる。そういうパワーのある存在がいたロックな幸福な時代を思わざるを得ません。







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