昨年インタビューにお応えいただいた若原正己さんの待望の新刊が出て、寄贈いただきました。先月の上旬に送っていただいたにもかかわらず諸般の都合で紹介が遅れて申し訳なかったです。ありがとうございました。
当初は生物学からみて「人はどこから来て、どこへ向かうのか」というようなタイトルの本になると思っていたので、一瞬、本のタイトルに意外な感じを持ちましたが、若原先生の現代社会に対する危機意識が反映したため、このようなタイトルになったのだと思い返し、少し厳粛な面持ちになりました。
「遺伝子」や「生物学」というテーマ。私自身、ほんの以前は実に縁遠い世界でした。一般の人たちより全然知らないことばっかりだったと思います。これもインタビューで個人教授していただいたおかげでして、この本もほとんど苦しまずに読み通すことができました。前半は生物の成り立ちの話から入りますから、インタビューで教授していただいた事柄がそのまま本の理解に役立ちました。そのような次第で、ほんのちょっと前の自分には想像もつかないことだったな、ありがたいことだな、というのが正直な感慨です。
やはり直接に著者とお会いして、 直接図示などもしてもらいつつ説明をいただいたり、 僕の稚拙な問いにも応えていただいたりした、そういうやりとりの中の中における先生 の語り口、表情、 言葉の印象その他が記憶の中で再現されるおかげだろうなとと思っており、 いかに直接的な出会いの中で教わることが、聞き手にダイレクトに伝わるものかと。再認識される思いです。 その意味でも人からいただくギフトが多い昨今だなあとしみじみ実 感しています。
もちろん、大変読みやすい構成になっていますし、 人文学社会学にもつながっていますから、 人文諸科学を専門に学びたい高校生への生物学(自然科学) の参考書としても最良かと思います。
分かりやすい記述の流れの中、白眉はやはり「人はなぜ争うのか」を取り上げた第七章。若原先生の文章には疑問、仮説、反証、自己弁証の跡が見えます。これはインタビューの限られたやりとりの中では再現不能な部分でしょう。言葉にしにくい思案の跡が見え、特に大事な章になっています。
前書き、最終章,あとがきにもありますが、人間の「争う」遺伝子の側面と、「平和」を希求する理念の双方を持つ相反した性格。
それをヒトは(映画)「ランボー」と、「マザー・テレサ」を兼ね揃えていると表現されています。誠に見事な表現だと思います。「暴力」と「倫理」の両面をヒトは持っている。それをアンドロジェンとオキシトシンというふたつのホルモンから仮説を立てる。これが第七章の最も面白い部分です。
あと、個人的には第一章の「全宇宙の物質の階層性」という整理から始まる部分が面白かった。物質世界から見た宇宙、生物、ヒトの社会という整理の仕方はともするといろいろ混沌とする頭にはひとつの基準としてそこに立ち戻りながら考えると分かりやすかったです。
生物学の立場から見る人文社会の世界。ぜひ多くの人に垣間見ていただきたいと思います。
若原先生のインタビュー(個人授業)はこちらから読めます。ぜひインタビューを参照にしつつ、この本も手にとって戴ければ幸いです。
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